第三種冷凍機械責任者/保安管理技術

冷凍の原理・冷凍サイクル・成績係数

顕熱と潜熱、熱の伝わり方、冷凍サイクルの4工程とp-h線図の読み方、冷凍効果・冷凍能力・成績係数の関係を、数値の例題つきでまとめます。

冷凍機はどうやって物を冷やしている?

冷凍機は、冷媒が蒸発するときに周りから奪う熱を使って物を冷やします。蒸発器の中で液の冷媒が気体に変わるとき、温度を変えずに多くの熱を吸い込むからです。

物に熱を加えたとき、温度の上昇に使われる熱を顕熱、温度を変えずに融解や蒸発などの状態変化に使われる熱を潜熱といいます。水を温めて温度が上がるのは顕熱、沸騰中の水が100℃のまま蒸気になるのは潜熱の働きです。冷凍装置は、蒸発器で潜熱を吸い込み、凝縮器で潜熱を吐き出して、低温側から高温側へ熱を運びます。

冷やす力の大きさは冷凍能力といい、kWで表します。昔からの単位の冷凍トンは、0℃の水1トンを24時間で0℃の氷にするのに取り去る熱量が基になっていて、1日本冷凍トンはおよそ3.86kW、1米国冷凍トンはおよそ3.52kWです。法令で使う「1日の冷凍能力(トン)」は冷凍保安規則の算定式で計算する値で、熱量の単位の冷凍トンとは別物です。

顕熱温度を変えるのに使われる熱。ブラインや空気を冷やすときの熱
潜熱温度を変えずに状態を変えるのに使われる熱。冷媒の蒸発と凝縮
1日本冷凍トンおよそ3.86kW(1米国冷凍トンはおよそ3.52kW)

熱はどんな形で伝わり、伝熱量は何で決まる?

熱は、固体の中を伝わる熱伝導、流体と固体の表面の間で移る熱伝達、電磁波で伝わる熱放射の形で移動します。冷凍装置の熱交換器で主に考えるのは、熱伝導と熱伝達の組合せです。

平らな壁を通る熱伝導の熱流量は、壁の両面の温度差と面積と熱伝導率に比例し、壁の厚さに反比例します。熱伝導率の単位はW/(m·K)で、銅やアルミニウムは大きく、霜や水あか、油膜は小さい値です。熱伝達率の単位はW/(m²·K)で、流体の種類や流れ方で変わり、流速が大きいほど一般に大きくなります。

冷媒から管の壁を通って冷却水へ、というように壁の両側の流体の間を熱が移る全体を熱通過といいます。熱通過率Kの逆数は、両側の熱伝達抵抗と壁の熱伝導抵抗を足したものです。伝熱量は、熱通過率×伝熱面積×平均温度差で表します。水あかや霜のように熱を通しにくい層が1枚加わるだけで抵抗が増え、熱通過率は下がります。

熱の流れ(高温の冷媒 → 低温の冷却水)冷媒(高温)冷却水(低温)赤い折れ線=温度大きく下がる所ほど熱を通しにくい厚さδ境膜(熱伝達率α1)金属壁(熱伝導率λ)水あか境膜(熱伝達率α2)1/K = 1/α1 + δ/λ + 1/α2 抵抗を足す(Kは熱通過率)水あかや霜が付くと、その層の抵抗が1つ加わり、Kが下がるΦ = K × A × Δtm 伝熱量=熱通過率×伝熱面積×平均温度差
壁の両側の流体の間を熱が移る熱通過。抵抗の大きい層ほど温度が大きく下がる

冷凍サイクルの4工程で冷媒はどう変わる?

冷媒は圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器の順に回り、圧縮・凝縮・膨張・蒸発の4工程を繰り返します。これを蒸気圧縮冷凍サイクルといいます。

圧縮機は、蒸発器から出た低圧の蒸気を吸い込み、高温・高圧の蒸気にして吐き出します。凝縮器では、その蒸気が冷却水や空気に熱を捨てて液になります。膨張弁では、高圧の液が狭い通路を通って絞り膨張し、圧力と温度が下がります。このとき外部との熱や仕事のやり取りがないので、比エンタルピーは変わりません。蒸発器では、低温・低圧の冷媒が被冷却物から熱を奪って蒸発し、再び圧縮機に吸い込まれます。

凝縮器2→3 凝縮蒸発器4→1 蒸発圧縮機1→2 圧縮膨張弁3→4 膨張2341高温・高圧の蒸気高圧の液低温・低圧の湿り蒸気低温・低圧の蒸気高圧側(2→3)低圧側(4→1)放熱(冷却水や空気へ)吸熱(被冷却物から)動力冷媒は 蒸発器→圧縮機→凝縮器→膨張弁 の順に回る(図では反時計回り)
冷凍サイクルの4工程と点1〜4。赤が高圧側、青が低圧側
1→2 圧縮(圧縮機)低圧の蒸気を高温・高圧の蒸気にする。動力を受け取る
2→3 凝縮(凝縮器)高圧の蒸気が熱を捨てて液になる
3→4 膨張(膨張弁)絞り膨張で圧力と温度が下がる。比エンタルピーは一定
4→1 蒸発(蒸発器)低圧の冷媒が熱を奪って蒸発する

p-h線図のどこを見れば冷凍効果と圧縮仕事が分かる?

p-h線図(モリエ線図)は、縦軸に圧力を対数目盛で、横軸に比エンタルピーをとった線図です。冷凍サイクルを描くと横長の四角形に近い形になり、横方向の長さを読むと熱量が分かります。

線図の中には、左側に飽和液線、右側に乾き飽和蒸気線があり、2本の線は上の臨界点で合わさります。2本にはさまれた部分が液と蒸気の混ざった湿り蒸気、飽和液線より左が過冷却液、乾き飽和蒸気線より右が過熱蒸気の領域です。理論冷凍サイクルでは、圧縮は比エントロピー一定の線に沿って右上へ、膨張は比エンタルピー一定の縦線に沿って真下へ進みます。

点1を圧縮機入口、点2を圧縮機出口、点3を膨張弁入口、点4を蒸発器入口とすると、冷媒1kgが蒸発器で取り入れる熱(冷凍効果)はh1−h4、圧縮機が冷媒1kgに加える仕事(理論圧縮仕事)はh2−h1です。凝縮器で捨てる熱はh2−h3で、冷凍効果と圧縮仕事の和に等しくなります。凝縮器出口の液が飽和温度より何度低いかが過冷却度、蒸発器出口の蒸気が飽和温度より何度高いかが過熱度です。

圧力 p(対数目盛)臨界点1234湿り蒸気過冷却液過熱蒸気飽和液線乾き飽和蒸気線凝縮圧力蒸発圧力凝縮蒸発膨張圧縮過熱度過冷却度h4=h3=245h1=405h2=440比エンタルピー h(kJ/kg)冷凍効果 h1−h4=160圧縮仕事 h2−h1=35凝縮器の放熱 h2−h3=195(=160+35)形は定性的な模式。目盛の値は本文の例題(数値は説明用に作ったもの)
p-h線図上の冷凍サイクル。横の長さが熱量で、冷凍効果はh1−h4

成績係数はどう計算し、何で上下する?

成績係数(COP)は、冷凍能力を圧縮機の動力で割った値です。理論冷凍サイクルでは冷凍効果(h1−h4)を理論圧縮仕事(h2−h1)で割ったものになり、値が大きいほど少ない動力で冷やせます。

凝縮温度を一定にして蒸発温度を下げると、圧縮比が大きくなって圧縮仕事が増え、吸い込む蒸気の比体積も大きくなって冷媒循環量が減ります。冷凍能力も成績係数も小さくなり、吐出しガス温度は上がります。蒸発温度を一定にして凝縮温度を上げた場合も、冷凍効果が減って圧縮仕事が増えるので、成績係数は小さくなります。圧縮比は吐出し圧力と吸込み圧力の比で、どちらも絶対圧力で計算します。

凝縮器の熱を暖房などに使う装置がヒートポンプです。暖房に使う熱はh2−h3なので、理論サイクルでは、ヒートポンプとしての成績係数は冷凍装置としての成績係数より1だけ大きくなります。

蒸発温度を下げた場合ph蒸発圧力が下がる冷凍効果冷凍効果↓ わずかに減圧縮仕事↑ 増成績係数↓ 低下吐出しガス温度↑ 上昇凝縮温度を上げた場合ph凝縮圧力が上がる冷凍効果冷凍効果↓ 減圧縮仕事↑ 増成績係数↓ 低下吐出しガス温度↑ 上昇基準サイクル変えたサイクル
蒸発温度を下げても凝縮温度を上げても、成績係数は小さくなる(形は定性的な模式)

例題:p-h線図の値から冷凍能力と成績係数を求める

理論冷凍サイクルで、h1=405kJ/kg、h2=440kJ/kg、h3=h4=245kJ/kg、冷媒循環量0.050kg/sとする(数値は説明用に作ったもの)。

  1. ① 冷凍効果 h1−h4=405−245=160kJ/kg
  2. ② 冷凍能力 0.050×160=8.0kW
  3. ③ 理論圧縮動力 0.050×(440−405)=1.75kW
  4. ④ 成績係数 8.0÷1.75≒4.57 160÷35でも同じ値になる
  5. ⑤ ヒートポンプとしての成績係数 (440−245)÷(440−405)≒5.57 4.57+1と一致する
  6. ⑥ 冷凍トンに換算 8.0÷3.86≒2.07日本冷凍トン

答え:冷凍能力8.0kW(約2.07日本冷凍トン)、成績係数約4.57、ヒートポンプとしての成績係数約5.57

よくある間違い:h1−h3やh2−h4を冷凍効果にしてしまう間違いが多い。冷凍効果は蒸発器の出口と入口の差(h1−h4)。

実際の圧縮機では理論値とどれだけ違う?

実際の圧縮機では、吸い込める蒸気の量も、冷媒に加わる仕事も理論どおりにはいきません。その差を表すのが体積効率・断熱効率・機械効率の3つです。

体積効率は、実際に吸い込んだ蒸気の体積をピストン押しのけ量で割った値で、すきま容積が大きいほど、圧縮比が大きいほど小さくなります。断熱効率は理論断熱圧縮動力を実際の圧縮に要した動力で割った値、機械効率は実際の圧縮に要した動力を軸動力で割った値です。軸動力は理論断熱圧縮動力を断熱効率と機械効率で割って求めるので、実際の成績係数は理論値より小さくなります。断熱効率が低いほど、吐出しガスの温度も理論より高くなります。

例題:効率を入れて実際の成績係数を求める

上の例題の装置で、断熱効率0.80、機械効率0.90とする。

  1. ① 軸動力 1.75÷(0.80×0.90)≒2.43kW
  2. ② 実際の成績係数 8.0÷2.43≒3.29

答え:軸動力約2.43kW、実際の成績係数約3.29

よくある間違い:効率を掛けてしまうと、軸動力が理論値より小さくなる。軸動力は理論値より大きくなるはず、と検算する。

職場ではどう使う?

冷凍倉庫の保守担当者は、圧縮機の吸込み圧力計と吐出し圧力計を毎日読み、蒸発温度と凝縮温度に置き換えて記録します。夏に冷却塔の能力が落ちて凝縮温度が上がると、同じ庫内温度を保つのに圧縮機の電流値が増えます。成績係数の低下に、電気代の請求より先に計器で気づけるかどうかが、この分野の知識の使いどころです。

庫内温度の設定を必要以上に低くするのも、蒸発温度を下げて成績係数を悪くします。冷蔵品しか置かない部屋を冷凍品向けの温度で運転していないか、設定値を見直すだけで動力が減ることがあります。

試験ではどう問われる?

この範囲の記述は、式の中身を入れ替えた誤りが作られやすいところです。冷凍効果を凝縮器側の比エンタルピー差にすり替える、成績係数の分母と分子を逆にする、ヒートポンプの成績係数を「1小さい」とする、といった型があります。

蒸発温度や凝縮温度を変えたときの向き(上がる・下がる、大きく・小さく)を1か所だけ逆にした記述もよく見かけます。熱伝導率W/(m·K)と熱通過率W/(m²·K)の単位の入れ替え、日本冷凍トンと米国冷凍トンの大小、圧縮比をゲージ圧力で計算させる記述にも注意します。計算そのものより、式が何と何の比かを言葉で説明できるかが問われます。

よくある質問

第三種冷凍の保安管理技術で成績係数の計算問題は出る?

令和7年度の第三種の保安管理技術には、数値を計算して答える問題はありませんでした。成績係数は、定義や蒸発温度・凝縮温度を変えたときの増減を、記述の正誤で問われます。例題を一度自分で計算しておくと、記述を読み違えにくくなります。

冷凍トンとkWはどう換算する?

1日本冷凍トンはおよそ3.86kW、1米国冷凍トンはおよそ3.52kWです。kWの値を3.86で割ると日本冷凍トンになります。法令で使う「1日の冷凍能力」のトンは、算定式で決まる別の値です。

ヒートポンプの成績係数が冷凍の成績係数より1大きいのはなぜ?

凝縮器で捨てる熱は、蒸発器で取り入れた熱に圧縮仕事を足したものだからです。暖房に使う熱を圧縮仕事で割ると、冷凍効果÷圧縮仕事に1を足した値になります。損失を考えない理論サイクルでの関係です。

読んだあとにやること

読んで分かった気になっても、手を動かすと止まります。この分野の練習問題で確かめてください。

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解説と例題は学習用に当サイトが作成したものです。例題の数値はすべてオリジナルで、過去の試験問題の本文・選択肢・数値は使用していません。 最新の法令と試験の内容は高圧ガス保安協会の公式情報で確認してください。